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<電子書籍>市場に変化 紙に代わる価値生む?(毎日新聞)

 電子書籍も読める米アップルの新型携帯端末「iPad(アイパッド)」が先月末、日本でも発売された。出版界にとっては“黒船来航”といわれ、携帯電話向けの漫画配信が中心だった日本の電子書籍市場に変化の兆しが見え始めている。電子書籍が本格的に普及すれば、日本の出版界はどう変わるのだろうか。【佐々本浩材】

 ■作家は

 アイパッド発売の8日前の5月20日。講談社は東京都文京区の本社で、作家の京極夏彦さんの小説『死ねばいいのに』を電子書籍として配信すると発表した。“紙”の単行本は5日前に発売されたばかり。大手出版社が新刊の文芸書を電子配信するのは初の試みだ。会見に同席した京極さんは「何らかの指針となるなら、と実験台を買って出た」と語った。

 価格は紙の本1785円に対し、アイパッド版は900円。講談社の野間省伸(よしのぶ)副社長は「実験的な意味合いが強い。作家の協力を得られたため、読者に体感してもらう機会を用意した」と説明した。今後は五木寛之さんの小説『親鸞』(5月12日から1カ月間、ネット上で無料公開)や京極さんの次作を電子書籍として有料配信する予定。だが、今のところ、それ以外の計画はないという。

 アイパッドが発売された5月28日には、日本電子書籍出版社協会(旧電子文庫出版社会)がアップルの多機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」用のアプリケーションを同日から無料で提供すると発表した。秋にはアイパッド用も無料提供する予定。同協会の加盟社は2000年から、パソコン向け電子書籍販売サイト「電子文庫パブリ」に小説などを配信してきた。これで1万点以上がアイフォーンなどでも読めるようになったが、新刊書は含まれていない。

 同じ日、東京都書店商業組合(大橋信夫理事長)は、書店の店頭にデジタルサイネージ(電子看板)を設置し、客を電子書籍販売サイト「ブッカーズ」へ誘導する実験を始めた。このサイトは同組合が2年前に立ち上げたものだ。

 今後は、書店で紙の本か電子書籍かを選んで買えるようにしていきたいという。小橋琢己・同組合常務理事は「電子書籍を入り口にして、紙の本の購入へ結びつけたい。書店はそういう演出や見せ方のノウハウは持っています」と語る。

 ■端末は着々

 日本の電子書籍の市場規模は08年度で464億円(インプレスR&D調べ)。その86%が携帯電話向けで、漫画が中心だった。文芸書などの新刊の配信については、大手出版社はまだ様子見の感が強い。もっとも、米アマゾン・ドット・コムの「キンドル」やソニーの「リーダー」など、読書専用端末の日本語対応版が早ければ年内に発売される見込みで、水面下で新時代への準備を続けているようだ。

 近い将来、紙の本は消え、完全に電子書籍に切り替わってしまうのだろうか。電子書籍が急増し、紙の本の部数が大幅に減った場合、「印刷などのコストがかさむ紙の本をやめ、電子書籍のみにしてしまう選択肢が浮上する」と予想する出版関係者は多い。

 しかし、京極さんは「現実的には考えられない」と否定的だ。「両者はユーザーも異なり、補完し合うことはあっても食い合うことはないと確信している」と話す。講談社の野間副社長も「作品を読む手段が増えることで、新たな読者が生まれていく」と相乗効果を予想している。

 ■出版社は

 電子書籍を巡って関係者がささやくもう一つの予想は「出版社が不要になる」というものだ。電子書籍は基本的に、だれでも容易に出すことができる。例えばアマゾンは米国で、サイト上に原稿をアップロードすれば、出版社の本と同じ土俵で販売するサービスをすでに始めている。条件に合えば販売価格の7割が著者に支払われるため、出版社を経由せずにアマゾンと直接取引するプロの作家も増えている。

 出版関係者によると、アマゾンの日本法人は1月下旬、出版社を集めてキンドルへの電子書籍の配信を呼びかけた。その際「日本で作家と直接契約することは今のところ考えていない」と明言したという。だが、「作家の○○さんはすでにアマゾンと接触した」といううわさも飛び交う。

 こうした状況でも、野間副社長は自信を見せる。「これからの編集者に求められるのは書籍のプロモーションから、映像・ゲーム化や海外展開まで、いかに作品をマネタイズ(お金に変えること)できるか。そうした能力では、出版社に一日(いちじつ)の長があると思います」

 電子書籍の将来像はまだ、だれにも明確に見えていないだろう。デジタルビジネスのコンサルティングなどをしているワイアードビジョンの竹田茂社長は電子書籍関連のイベントで「実は電子書籍をユーザーが望んでいた事実はない。紙に代わるような価値を生み出して初めて電子書籍は成功する。言葉だけをはやらせようとするのは本末転倒」と指摘し、会場の共感を得ていた。電子書籍は読者に新たな世界を体験させられるのか。肝心なのはこれからだ。

 ◇電子書籍を巡る動き◇

95年11月 パソコンを通して電子書籍を販売する「電子書店パピレス」がスタート

00年 9月 大手出版社8社が「電子文庫出版社会」を設立し、パソコン向け電子書籍販売サイト「電子文庫パブリ」を開設

02年 1月 新潮社が携帯電話で「新潮ケータイ文庫」のサービス開始

04年 2月 松下電器(現パナソニック)が電子書籍専用端末「シグマブック」を発売(08年、製造中止)

04年 4月 ソニーが専用端末「リブリエ」を発売(07年、国内向けは製造中止)

07年11月 アマゾンが米国で専用端末「キンドル」を発売

08年 9月 作家の瀬戸内寂聴さん(ペンネーム・ぱーぷる)がケータイ小説「あしたの虹」を発表

09年 2月 アマゾンが米国で新機種「キンドル2」を発売

09年10月 米大手書店バーンズ&ノーブルが専用端末「ヌック」発売

09年12月 アマゾンが「クリスマス当日の販売数で電子書籍が紙の本を上回った」と発表

09年12月 ソニーが米国で無線通信機能付きの専用端末「リーダー」の新機種を発売

10年 4月 アップルが新型携帯端末「アイパッド」を米国で発売

10年 5月 日本と欧州などで「アイパッド」発売

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